【要旨】
- 短絡はアジアにおける火災事故の主な原因の 1 つであり、電気配線の不適切な管理および使用により発生します。
- 短絡の防止策として、コンセント状態や電源タップ容量の確認、ブレーカーの適切な設置、各国の安全規格に準拠した電気機器の使用、扇風機のメンテナンス等の対策が求められます。
- 電気火災は突然発生するように感じますが、適切な管理・点検すると事前に兆候を確認することができるため、電気火災のリスクを認識して日頃から対策を講じることが重要です。
短絡は火災事故の主な要因の一つ
東南アジアの高温多湿の気候は電気設備にとって過酷な環境であり、短絡(Short Circuit)は身近な火災の原因の一つです。バンコク消防局の統計データによると、タイにおける火災原因で最も多いのは草地火災・廃棄物火災であり、次に短絡による電気火災となっています(下図参照)。短絡はタイのみならず多くのアジア諸国において主たる火災事故要因となっており、短絡は最悪の場合には壊滅的な火災事故に繋がるおそれがあります。工場やオフィス、家庭の一般的な電気配線には共通して短絡のリスクが潜在しており、誰もが短絡のリスクと対策について認識しておくことが重要です。
Figure 1: 草地火災・廃棄物火災(左)と短絡(右)の年次比較データチャート
(Reference: Bangkok Fire and Rescue Department)
※上図には、2017 年 1 月から 2023 年 3 月までの統計データが示されています
短絡とは?
短絡は、電気が回路内の従来の経路から外れた近道を見つけたときに発生します。これは通常、異なる電圧の 2 本の電線が意図せず接触した場合、または電気導体が地面に接触した場合に発生します。短絡は電線の過熱や溶解、火花の発生などを引き起こすことがあります。これにより近くの引火性または可燃性の物質が発火すると、火災となる危険が生じます。
一般的な家庭用電気機器には毎日使用するような扇風機、ソケット、およびその他の電化製品がありますが、これらの機器は、過度の使用や損傷による短絡を引き起こす潜在性を持っています。
Figure 2: 短絡(Short circuit)のイメージ (Reference: generated by OpenAI’s DALL-E model)
短絡を含む電気事故の発生要因
短絡やその他の電気事故は、以下のような様々な要因によって引き起こされる可能性があります。
- 動物や虫による電気配線の損傷
- 水やその他の液体の電気配線との接触
- コンセント付近への埃の堆積によるトラッキング現象
- 電気盤内の配線接触部の緩み
- コンセント、スイッチ、照明、その他の電気機器の老朽化や破損
- 壁に貫通した釘やネジと電気配線の接触
- 電気配線の被覆の劣化
- 過電流や雷サージ
- 過負荷の電気機器による発熱 (過負荷とは、負荷が通常または定格電流よりも多くの電流を取る状態のこと)
不適切な箇所での使用・保管、規格外の機器の使用、長時間の継続使用、回路の過負荷など、電気機器を不適切に使用した場合に短絡やその他の電気事故の可能性が高まります。これらが過熱を引き起こし、ケーブルを損傷させて回路の絶縁を損なうことで短絡等の不具合を引き起こし、火災の危険をもたらします。
電気事故の対策
短絡等の電気事故は、様々な場所や状況で発生する可能性がありますが、リスクを軽減するために以下の方法が有効です。
コンセント周辺のチェック
コンセントは日常生活で頻繁に使用されますが、トラッキング現象による短絡等、電気火災を引き起こす一つの原因でもあります。防止するためにはコンセントを定期的にチェック・清掃する必要ことが重要です。コンセントが破損していたり、焦げていたり、埃や汚れが堆積している場合は、コンセントをメンテナンス、または交換することが推奨されます。
Figure 3: 焦げたコンセントのイメージ
(Reference: generated by OpenAI’s DALL-E model)
過度な タコ足配線をしない
電源タップは、一度に多くの電化製品を使用することができますが、電源タップには接続可能な定格容量定められており、それを超えると火災につながる可能性があります。接続する機器の消費電力を確認し、その合計が電源タップの定格容量(一般的なタップは1500W程度)を超えないようにすることが重要です。また、電源タップ自体に漏電や過電流が発生した場合に自動で遮断されるブレーカーが搭載されている製品の使用も電気事故防止に有効です。
Figure 4: 電源タップ同士の接続イメージ
(Reference: generated by OpenAI’s DALL-E model)
ブレーカーの確認・導入
ブレーカーは電気回路で発生する異常事故(過電流や短絡)から、 電気配線を守る安全装置です。火災事故防止のためにブレーカーを設置して定期的にメンテナンスを行うことが重要です。日本においては漏電ブレーカーの設置が一般的ですが、東南アジアでは義務化されていない、もしくは義務化されていても設置されていない場合も考えられるため、必ずブレーカーが適切に設置されているか確認しましょう。
各国の規格に準拠した電気機器を使用する
IEC(国際電気標準会議)やUL(アメリカ)等の安全規格は、粗悪な電気機器による事故防止のために設けられており、これらに適合している製品は一定の安全性を有しているといえます。各国で使用されている安全規格を確認し、その認証品を使用することが事故防止につながります。
Figure 5: 例:タイの規格TISIのマーク
(Reference: Thai Industrial Standards Institute (TISI))
扇風機からの出火対策
東南アジアでは扇風機を使用している場面が多く見受けられます。扇風機は周囲から埃を集めやすく、モーター付近に蓄積した場合に負荷がかかり過熱の原因となります。モーターの熱は配線を劣化させて短絡の原因にもなるため、定期的な清掃によって短絡リスクを減らすことが重要です。また、長時間の使用による熱の蓄積を防ぐため、複数台の扇風機を交代で稼働させることも重要です。また、扇風機の耐用年数は一般的に10年前後であるため、耐用年数に近い年数が経過した場合には、異常がないかチェックして必要に応じて交換や修理をお勧めします。
Figure 5: 埃が堆積した扇風機
(Reference: generated by OpenAI’s DALL-E model)
References
https://www.thespruce.com/what-is-electrical-circuit-overload-1152861
https://www.bangkokfire.go.th/dashboard-สถิติเหตุสาธารณภัยต่า/
https://www.ohswa.or.th/17803510/ซีรีส์พื้นฐานความปลอดภัยด้านไฟฟ้าที่เจ้าหน้าที่ความปลอดภัยต้องรู้-ep1
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http://www.kitchenindy.com/article/3/วิธีเลือก-ปลั๊กพ่วง-ปลั๊กไฟ-ให้เหมาะกับเครื่องใช้ไฟฟ้าภายในครัว
https://www.q-chang.com/blog/short-circuit/#:~:text=1.%20ไฟฟ้าลัดวงจร%20เนื่องจากใช้กำลังไฟฟ้าเกิน&text=หากเรามีการใช้,สู่เหตุการณ์ไฟไหม้ได้
https://www.tisi.go.th/data/about/tisi_standard_mark.pdf
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