タイ南部ソンクラー県などで発生した洪水の状況
要旨
- 2025年11月19日~22日にかけての大雨によりタイ南部で洪水が発生し、ソンクラー県ハートヤイ(ハジャイ)郡などで浸水被害が発生しています。
- タイ南部では11月19日以降、1日の降雨量および累積雨量のいずれも平年値を大幅に上回っており、11月24日も継続して大雨が降っています。
- 2025年11月19日~25日の衛星観測による解析データによれば、ソンクラー県だけで146,297 Rai(約234km2)が洪水被害を受けている可能性があります。
- ソンクラー県ハートヤイ郡で洪水被害が発生した原因は、記録的な大雨によりウタパオ運河からの当該地域への流入水によると考えられます。気象条件に加えて、周囲の運河が同地区に集中する地理的要因が指摘されています。
- タイ北部および中部は雨季から冬季へ移行していますが、南部では12月ごろまで大雨となる可能性があり、今後も大雨および洪水への警戒が望まれます。
降雨量
下図は左からそれぞれ、2025年1月1日~11月24日における累積降雨量、累積降雨量と平年値(*過去30 年間の平均値)の差、および降雨日についてのタイ国内の分布を示しています。
2025年11月24日時点の累積降雨量は昨年同時期と比較すると全国的に上回っており、南部でもその傾向が確認できます。
一方で2週間前の11月10日時点では、ソンクラー県などの降雨状況は平年以下や平年並み、または平年よりもやや多い状況であり、11月19日からの大雨の影響が顕著であることが分かります。
11月18日から24日までの、1日の降雨量を以下に示します。11月19日からタイ南部で顕著な大雨が観測されています。おおむねソンクラー県全域で、11月21日および24日は200-300mm、22日は300-400mmの雨量がそれぞれ報告されています。
洪水被害の状況
GISTDA(Geo-Informatics and Space Technology Development Agency)による2025年11月19日~25日の解析データによれば、ソンクラー県内で146,297 Rai(約234km2)が洪水被害を受けている可能性があり、約3万軒の家屋、および約20万人に影響が発生していると推定されています。タイ南部の主要としであるソンクラー県ハートヤイ郡でも洪水が発生しており、同地域における推定被害範囲は52,731Rai(約84km2)で、約2万5千軒の家屋、および約15万人に影響が発生していると推定されています。
その他の洪水発生の要因
今回の洪水発生の原因として、記録的な大雨に加えて周辺地域の地理的要因も指摘されています。ハートヤイ郡の地形は、北にあるソンクラー湖に向かって傾斜した低地です。市内には、周囲の山脈からソンクラー湖へ流入するウタパオ運河およびその支流が流れています。3方向からの降雨水および河川水がウタパオ運河に流れ込み、低地のハートヤイ郡を通過してソンクラー湖へ流入します。ハートヤイ郡周辺の降雨に加えて、周囲の山地・山脈の雨水が大量に流入したことにより、今般の洪水被害が発生しているものと考えられます。
今後の降雨予想
タイ気象庁(TMD)の11月24日~30日の7日間予報によると、タイ南部では低気圧および北東モンスーンの影響により期間前半での全域的な大雨が予想されています。期間後半では全域的な降雨量は減少する見込みであるものの、局地的な大雨への警戒が呼びかけられています。
王立灌漑局(RID)管下機関であるSmart Water Operation Center(SWOC)の11月25日発表の3日間予報においても、タイ南部およびマレー半島の強い低気圧、ならびに北東モンスーンによる大雨が予想されており、大雨、鉄砲水および低地氾濫などへの警戒が呼びかけられています。
今後の降雨予想 (アップデート情報)
タイ気象庁(TMD)の11月26日~12月2日の7日間予報によると、期間前半はタイ南部では中程度の北東モンスーンの影響により、全域的には降水量が少なくなる見込みであるものの局地的な大雨が予報されています。期間後半では所により雷雨となる予報です。
王立灌漑局(RID)管下機関であるSmart Water Operation Center(SWOC)の11月27日発表の3日間予報においても、タイ湾南部およびアンダマン海を覆う中程度の北東モンスーンによる大雨の危険性への警戒が呼びかけられています。
出典
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